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2008.12.15,Mon
続きを書けるとは思っていなかった小話の続き。りんが卵をアレして兄はナニできない話(何)の続きです。→前回
円滑な対人関係を築くまでの流れみたいになりつつあるような。(問題発生の発端→互いの要求の齟齬→譲歩・妥協→解決。例えばそんな一連の流れ)
今回は齟齬っぽいです。でもケンカではないのがこの二人。


Rとか無しで('Д')つまり、今回も兄お預け。

前回に比べるとなんだかネクラな語りです。
宜しければ折込からご覧くださいませ。



**********************


悲愴な覚悟からの無抵抗など詰まらぬもの。
理不尽であろうとなかろうと、それをもたらす者がこの私だろうと。自身が納得し得ぬなら抗い続ける性が、私を惹きつけ止まぬお前の強さだ。
聞き分けろと云い聞かす傍ら、この様なことを考えているとはお前は思いもしないだろう。
「ごめんなさい……」
俯き、涙が零れ落ちぬ様奥歯を噛み締め堪える姿を黙って見下ろす。
これ程までりんを追い詰める気など欠片もなかった。ほんの僅かな、言葉と態度の行き違いが、この場に在ってはならない気詰まりな雰囲気を生み出してしまっている。
「……あれも嫌、これも嫌って…。わがままばかりで、ごめんなさい……」
「……もうよい」
弁の立たぬ己には今のりんを慰める言葉も見出せず。また、己を責め意気消沈するりんに無体を強いる気にもならず。結局抱き寄せはしたものの、昨夜と同じ様にそのまま寝入らせるしかなかった。


りんが騎竜を飼育する小屋から、見捨てられた竜の卵を持ち帰った。
昨夜、床につく前に知らされた際は既にりんの意志固く、渋々ながらもそれを許した。
よもや、褥の中にまで持ち込むつもりであったとは思いもせず、その点に関しては不覚を取ったが。
しかし孵化するまでの夜全てを無為に過ごしはしない。たかが低位竜の卵如きに幾日幾夜も、妻の関心を奪われるなどあってはならない。
要は冷やさねば良いのだろうと先刻、夕餉の後、邪見に押し付けた。主の前だろうと聞こえよがしにぼやく不肖なる従僕には構わず、りんの様子を伺った。
りんは案じた顔付きをしながらも、邪見の体に卵を包んだ布を更に何往復も巻き付けた。それ故、この処置には一応の納得をしたのだろうと、そうみていた。
しかしさにあらず。頑丈に卵が繋がれ、よろめきながらの退出の許しを邪見が述べた途端、りんは随分と調子のはずれた声を上げたのだった。
「え?」
「…え、って……りん、何じゃ?」
「邪見さま、どこに行くの?」
「どこって…決まっておろう。ワシとてちゃーんと一室頂いておる。自室に戻って休むんじゃ」
「……邪見さまも一緒に寝るのではないの?」
この一言でりんが戸惑い出した理由に気付く。
「ばっ、ばかを申すな!野山を流離った昔とは違うのだぞ。御方様に納まったお前はともかく、ワシが侍るわけにはいかんのじゃ」
「そんな……。じゃあ、りんも一緒に邪見さまのお部屋に……」
「お前はワシの話を聞いていたのかっ?お前まで下がってどうするんじゃっ」
邪見は昔と変わらぬままの扱いをりんにするが、りんもそれを望んでいるので、このような些か奇妙なやり取りに関して思うことはない。
「お前の部屋はここじゃ。ワシはワシの部屋で朝までこれを預かるだけじゃ!」
「だめっ。その子も連れて行ったら嫌!」
それはともかくも。連れ去られる子を取り戻さんとばかりに、自ら邪見に厳重に巻き締めた布を再び強引に解き、中心にあったものをりんは再び手中に取り戻し。邪見は転げ出るようにして退出して行った。
昨夜と同じ様に膝に乗せた卵を抱き込み、りんは微かに身を震わせる。
認識不足であった。
中が死なぬよう温めてさえいれば良いのだろうと、その程度に捉えていた。しかし、りんの望みはそればかりではなかった。
私にとってはただの卵でしかないそれも、りんには己が目の届かぬ場所に一刻たりとも置けぬ程の離れ難い、庇護すべき対象だったのだ。
成程と、理解する。
りんの心中を先夜以上に解した、新たな発見に満足こそすれ、りんが恐縮しているような気儘な様に対する不興など全く無い。
そのような結論をそのままりんに伝えればりんの思い込みも解けただろうが、ようやく言葉として形を成した頃にはもう、生憎とりんは寝入ってしまっていた。
隣に横たわるその顔に先程まで在った哀切の色も今は潜み、僅かに背を丸め、呼吸も穏やかに繰り返されている。そしてやはり、懐の位置に卵を抱き込んでいた。
己で動くことすら未だ出来ぬ分際で。
よくもここまで振り回してくれるものだと、不躾にりんとの隙間を作らせる騒ぎの元に向かい内心溜息を吐く。
それから暫し、褥の上に流れる黒髪を指先で弄んだが、間もなくりんに倣い夜明けまで瞼を閉じることにした。




**********************

自主的我慢の一夜。

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